しれない」
「ええ、働きますとも。しかし僕は何をすればいいのでしょう」
「それはデニー先生が命令される。さあ、いっしょに配電盤の前へ行こう」
 マートン技師に連れられて、河合少年は配電盤の前に集まる技術者の一団に加わった。機械の好きな河合少年は、心臓をどきどきさせて、デニー博士の命令を待った。


   重力は減る


 変になったエンジンの調子を正常にとりもどすことは、絶望かとも思われた。すでに地上から飛びだしてから十四時間を経過したが、あいかわらずエンジンは勝手に働き続けている。
 それでもデニー博士は、次々にエンジンに手を加えている。機械の間から青い火花が散ったり、絶縁物がぼうぼうと燃えだしたり、とうぜん[#「とうぜん」はママ]油がふきだしたり、にぎやかなことであった。河合少年はマートン技師と組んでそういうときに勇敢に機械の中にとびこみ、応急処置を行った。
 誰も余計な口をきく者はいなかった。十四時間ぶっ通しに、すこしの乱れもなくエンジンと闘っている技術者だった。
 このときデニー博士が、くるっと背中を廻して、一同の方へ向いた。何か新しくいうことがあるらしい。
「諸君。これから後
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