……」
「ほんとだ。で、僕たちはどうして空中へ放りあげられたんだろう」
 山木は早口で、河合にきく。
「さあ、分らないね、それは……」
「家ごと空へ放りあげられるというのは変じゃないか。飛行機は空を飛ぶけれど、家が空を飛ぶ話をきいたことがない」
「噴火じゃないかしら」
 ネッドが、ぶるぶる唇をふるわせながらいった。
「噴火。噴火して、どうしたというんだい」
「この塔の下に火山脈があってね、それが急に噴火したんだよ。だから塔が空へ放りあげられたんだ」
「そうかもしれないね。とにかくたいへんだ。そのとおりだとすれば、やがて僕たちは、えらい勢いで地上めがけて落ちていくよ。そして大地へ叩きつけられて紙のようにうすっぺらになるぜ。いやだなあ」
 と、のっぽの山木がさわぎだした。
「僕もいやだよ」とネッドも叫んだ。
「人間が紙のようにうすっぺらになっちゃ、玉蜀黍《とうもろこし》や林檎《りんご》や胡桃《くるみ》なんかのように、平面でなくて立体のものは、たべられなくなっちゃうよ」
「それどころか、僕たちは地上へ叩きつけられたとたんに、きゅーっさ。死んでしまうんだぞ」
「死ぬんか。ほんとだ。死ぬんだな。
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