た。僕たち四人は、牛の背中にのって、ニューヨーク市のブロードウェイを通っているぞ」
「牛の背中にのって……」
ネッドが目をまるくした。
「……紙の花片が、大雪のようにふってくる。五色のテープが、僕たちの頭上をとぶ。すばらしい歓迎ぶりだ……」
「うそだよ、そんなこと。僕たち四人がそんなすばらしい目にあう気づかいないよ。だって、僕たちは、おこずかいを貯めて、やっと自動車旅行をしている身分じゃないか」
と河合が、山木の手を払っていえば、山木も、
「ふうん、話が少しお伽噺《とぎばなし》みたいだね」
と、今はうたがいを持ったらしく、首をひねる。
そのときだった。どこかでベルがけたたましく鳴りだした。と、人々のわめく声、つづいて乱れた足音が廊下をかけて行く。
「何だろう、あれは……」
「火事じゃないかな」
「火事じゃないだろう。映画が始まるんじゃないかな」
「よし、張君に占わせよう。さあ張君。占った。あのベルの音は、何事が起ったのか」
「さあ、困ったなあ」
「さあ早く早く」
ネッドが水晶の珠を張の方へおしつける。
「まあ、待て、もっと落着かなくては……」
「そんなことは後にして、廊下へ出
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