ル・マートンはおどろいた。彼は早速このことを本部へ知らせると共に、そこに居合わせた同僚五名に直ちに仕事を中止させ、そして全員を自動車に乗せ、あの牛乳配達車のいる方向へ向って飛ばしたのだった。
 この車が現場に到着したときは、牛乳配達車の方は、岩の上には車輪をのしあげ、ぐらりと左に傾いたまま停車していた。車はこうして、じっとしていたが、じっとしていないのは人間の方だった。四少年は、山木も河合も張もそしてネッドも、岩石散らばる荒蕪地の上を転々として転げまわり、そしてはははは、ひひひひと笑い転げていた。いったい何がおかしいというのであろうか。
 そこへ自動車を乗りつけ、車から降りたビル・マートンを始め六名の団員は、雑草と岩石の上を転げまわって笑う四人の少年の姿をうちながめ、一せいに表情をかたくして、その場に立ちすくんだ。
 やがてマートンが叫んだ。
「ああ、大きな手ぬかりだった。この人たちは危険なR瓦斯を吸ってしまったのだ。そしてこの通り苦しんでいる」
「苦しんでいるのじゃないよ。おかしくて仕方がないという風に、笑い転げているんだ」
「ちがうよ。おかしくて笑っているのではないよ。おかしくもな
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