か」
 と、張はコーヒーを入れたコップ代りの空缶を下において、ごろりと寝ころがった。
「でも、張君。それは罪だよ。デニー博士は、君の占ったことを本当だと思って、今も大いに悩んでいることだろうと思うよ。可哀そうじゃないか」
 山木は同情して、そういった。
 そうだ、火星探険協会長たるデニー博士は、この頃たいへん悩んでいて、これまで自信をもっていた自分の判断力に頼ることができなくなり、牛頭大仙人の水晶占いのことを聞きつけると、わざわざ駆けつけたものであろう。だから多分博士は、張のいったことを今本気で信じているのではなかろうか。きっと、そうだ。すると博士の火星探険計画に、これから何か重大な影響を及ぼして来ることだろう。これはたいへんなことになった。


   赤三角研究団


 話はここで変って、赤三角研究団というものについて記さなければならない。
 赤三角研究団とは、変な名前である。が、これにはその団員が研究衣の肩のところに、赤い三角形のしるしをつけているので、そうよばれる。本当のちゃんとした名前が別にあるのだが、土地の人は誰も皆、赤三角研究団とよびならわしているので、ここでも当分そのよう
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