摺《ひきず》ったカーテンのような衣を着、いやに取済ました顔付をしていたが、山木たちがあまりいつまでも見つめているものだから、はずかしくなって、とうとうぷっとふき出した。
「さあ、ぼんやりしないで、一刻も早く神秘の箱車を走らせたり、走らせたり」
「おい、大丈夫か」
山木と河合とは、運転台にとびあがり、早速エンジンをかけて車を動かした。
おどろいたのは、そのエリス町の人々であった。天から降ったか地から湧《わ》いたか、異様な箱自動車ががたがた音をさせて入ってきて、牛頭大仙人の占いを、顔の真黒な子供とも老人とも区別がつかない従者が高い腰掛の上から宣伝したものであるから、みんな目を見はっておどろいた。これをネッドたちの方からいえば、宣伝効果百パーセントであった。
従って、この箱車が元の町はずれの野原へ戻って来たときは、後から町の閑人たちがぞろぞろと行列を作ってついてきたもんだ。
「ふん、しめた。これなら明日一ぱいの食糧ぐらいなら集まりそうだ」
猿の腰掛の上でネッドは胸算用をして、にっと笑った。
いよいよ占いが始まった。希望者は一列にならんで、自分の順序を待った。若い男女もあれば、老人も
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