には、ネッドの義兄が会員として入っているので、その手づるで借りることができたという。しかしこのようなぺちゃんこの車になっては、どう詫びて返したらいいだろうかと、日頃は楽天家のネッドも箱車の後から顔をのぞかせて青息吐息であった。
それでも旅程は一日一日とはかどって、だんだんアリゾナ州へ近づいていった。とはいうものの、まだやっと半道を過ぎたばかりである。
その頃、貯蔵の食糧が、がっかりするほど減ってしまった。この調子でいくと、四人はコロラド大峡谷の中で餓死《がし》するおそれがあることが分った。食糧係の河合は、目を皿のように丸くして、この一件をどうするかについて一同に相談をかけた。
「僕とネッドがむりに加わったからいけないんだ。その原因は僕たちにあるんだから、なんとか僕たちで考えよう」
張は、わるびれずにいった。その様子があまり気の毒だったので、山木が言葉をかけた。
「おい張君。君が大切にしている水晶さまにお願いして、缶詰を二箱ぐらいなんとか都合してもらえまいか」
「冗談じゃない。そんなうまい力は、水晶さまにありゃしない」
張が正直なことをいったので、皆は声を揃えて笑った。するとネッ
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