た。それは名曲に魅せられてすすり泣いているように思われた。
「おーい河合。そんな音盤はやめちまえ。ベートーベンじゃ踊りようがないじゃないか」
 箱自動車の上から、山木がどなった。
「もっと踊れるにぎやかな曲をやってくれ。あれ見ろ、火星人が吠えているよ。今にこっちへとびかかってくるぜ」
 ネッドが下へ抗議の声を送ってきた。
「ああ、そうだったな、君たちは踊っていたんだ。今、曲をかえるよ」
 河合は、また、あわてて音盤をかけかえた。手にあたったのが「越後獅子」であった。これならにぎやかなこと、まちがいなしだ。
 和洋合奏のにぎやかな曲がはじまった。
 すると、そのききめは、すぐ現れた。墓石のように硬くなっていた火星人群は、たちまち陽気に動きだした。手をふり足をあげ、重そうな頭を動かして、釜の中へ蝗《いなご》を放りこんだように、ものすごく活発な踊りを始めた。
「おーい、その曲はだめだい」
 上から山木がどなった。
「だってにぎやかでいいじゃないか」
「いや、だめだい。にぎやかすぎて、踊の方がついて行けないよ。かわいそうに、ネッドなんかまじめに踊っているもんだから、足がふらふらしているよ」

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