こづかいは十分というわけには行かなかった。そこで学業のひまに新聞を売ったり薪《まき》を割ったりして働いて得た金を積立てて自動車を買うわけであるから、あまり立派なものは手に入らなかった。今二人が頼んであるのは、牧場《ぼくじょう》で不用になった牛乳配達車であり、しかもエンジンが動かなくなって一年も放りだしてあったというたいへんな代物《しろもの》で、二人にはキャンプ材料に食糧を積むのがせいいっぱいであると思われた。
 しかし友だちには、その大旅行の自動車がそんなひどい車である事を知らせず、非常に大きな車で、中で寝泊《ねとま》りから炊事《すいじ》から何から何まで出来るりっぱなものだと吹いておいたものだから、さてこそわれもわれもと、連れて行くことをねだられるのだった。
 そういう友だちの中で、とりわけ熱心にねだる者が二人あった。ひとりは中国人少年の張《チャン》であり、もう一人は黒人のネッドであった。山木も河合も、張とネッドなら連れていってやりたかったけれど、何をいうにも自動車のがたがたなことを考えると、やっぱり心を鬼にして断るしかなかった。それでも張とネッドはあきらめようとはせず、毎日のように校
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