してはげしくふられた。
「ヘーイさんだったのか。こんなところであうなんて……」
「ぼくは日本がすきだったから、志願《しがん》をしてやって来たのさ」
「将校でしょう。見ちがえちゃったな」
「そうだろう。むかし、夜おそく君んところの店をたたきおこして、時間外に、酒やかんづめを出してもらったときの、のんべえのヘーイさんとは、すこし服装がかわっているからね。しかしねえゲンドン、中身はやっぱりあのときと同じヘーイさんだよ。安心してつきあっておくれ。おもしろい話が、うんとあるよ」
そういってヘーイ少佐《しょうさ》は、大きなこえで笑ったが、とたんに、
「あいたタタタタ――」
と顔をしかめた。大きく笑ったのが傷口《きずぐち》にひびいたためであった。
そのとき看護婦たちがヘーイ少佐に、早く中へ入って手当を受けるようにとすすめなかったなら、少佐はまだまだゲンドンと思い出話をやめなかったことだろう。
少佐は、それから病院の中へ入った。そして手術室で手当を受けた。
隊との連絡がついて、やがて三時間たったら寝台車で隊へはこぶこととなった。それまでを、少佐は病室でしずかにねむることとなった。
源一は少
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