、順番に下げていくのです。そうしないと、乗り物も人間も、圧力のかわりかたがはげしいために壊《こわ》れたり、からだが破れたり内出血《ないしゅっけつ》したりします」
 なるほど、そういうものかと、東助とヒトミは目をみはった。
 数字をかいた円盤は、エレベーター仕掛《じか》けになって上り下りできるようになっていた。それは樽ロケットをのせて二の扉のところまで下ると、第一の扉が横からすべりでて始めのように穴をふさぐ。それから圧搾《あっさく》空気が、いっしょにはいりこんだ海水を外へ吹きとばす。
 するとこんどは第二の扉が樽ロケットをのせたまま、第三の扉のところまで下る。第二の扉のところが閉《し》まる――という風に、扉は開いたり閉ったりして、やがて五つの扉の全部を通って、樽ロケットは一つの大きな部屋におちついた。
「さあ、でましょう」
 ポーデル先生は、いつの間にか外出の姿になっていて、東助とヒトミをうながした。
「海底国見物ですね」
「海底国はどんなところかしら。どんな人が住んでいるんでしょう」
「まあ、おちついて、よくごらんになれば分ります」
 先生はそういった。
 三人が樽ロケットをでると、この大きな部屋の一方に戸口《とぐち》ができていた。
 戸口をでたところに、これも広いプラットホームみたいなものがあった。そしてそのホームとホームの間には、川が流れていた。
「こんなところに川が流れているわ」
「いや、それは川ではありません。『動く道路』です」
「動く道路というと、なんですの」
「道路が走っているのです。九本の道路が並んでいますが、両側とも外のが白。それから青、橙《だいだい》色、藍《あい》、赤となって、まん中が赤です。白が一番おそく走っている道路で、となりへいくほど速くなり、まん中の赤の道路が一番速く、時速百キロで動いています」
 なるほど、なるほど、川ではない。動いているから川が流れているのかと思ったのだ。しかし川ではなく、博士のいったとおりに道路が動いているらしい。
「すると、動く道路というのは、ふつうの土やコンクリートじゃないのですね」
「そうです。一種のゴムです。適当な摩擦《まさつ》をもっていて、弾力《だんりょく》も頃あい、そして丈夫なことにかけては、巨人やブルトーザがのっても平気で、きめられたスピードで走るのです。さあ、私たちもあれにのりましょう。はじめの外側の一
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