びだした。雷鳴のような音、息ぐるしさ。それらは前と同じようであった。
が、急にあたりが明るくなった。
太陽が頭上にかんかんとかがやいている。涼しいそよ風がふいてくる。見ると一面の砂漠であった。
ふりかえると、この前、地下室で見たと同じ形の小さい樽が一つ、砂の上にあった。そして白い煙をはいていた。この小さい樽の中からでてきたのかと思うと、ふしぎでならない東助とヒトミだった。
「ここはどこですか。どこに、おもしろいものがあるんですか」
「まだ気がつきましぇんか。あそこをごらんなさい」
博士が地平線をゆびさした。
東助とヒトミは、ゆびさされた方を見た。が、見る見る二人の顔におどろきの色がうかんだ。
緑色の怪物
地平線のかなたに、何が見えたか。
はじめは、地平線の上に、緑色の海があって、波が立っているように思われた。が、すぐそれはまちがいであると分った。地平線の上を、緑色のあやしい姿をした怪物が、さかんに踊りまわっているのであった。
それは、おそろしいほどたくさんの集団に見えた。
「なんでしょう、あれは……」
「こっちへくるわ。いやあねえ」
「なんですか、あれは。ええと、ポーデル博士」
東助は、うしろに立って、にやにや笑っている博士にたずねた。
「彼らは、今に、こっちへくる。来れば、それが何者だかわかるでしょう」
博士は、それ以上語ろうとはしなかった。
博士のいう「彼ら」とは、いったい何者であろう。二人が目をみはっているうちにも、彼らの集団は、だんだんこっちへ近づくのが分った。彼らは、頭の上に長い手をふりたてて踊りくるっている。みんな緑色の細いからだを持っている。赤い花みたいなもので、からだをかざりたてているのもあるようだ。
「あれ、何なの。あんな生きもの見たことないわ」
「あれで動いていないと、熱帯の林のようなんだけれどね。しかし林ではない。林はしずかなところだ。彼らは、それとはちがって、気が変になったように踊っている。いや、こっちへおしよせてくる。気持が悪いね」
ヒトミは、いつとなく東助の方へからだをよせて、手をしっかりにぎっていた。
彼らの姿が二人の方に近くなるにしたがって、彼らのいきおいのはげしさにおどろかされた。彼らは洪水《こうずい》のように、こっちへおしよせてくる。
その間にも、東助は彼らの正体をつかもうとして一生けんめ
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