士と共に白い道路から、動かない舗道《ほどう》の上へとび移った。
「ああ、きれいだこと。りっぱな広場ですわねえ」
「広いなあ。こんなりっぱな広場を見たことがない」
広場は円形になって、二万坪はある。そのまわりに、何十階という高層建物がたちならんでいるが、その一つ一つが、形や色彩がかわっている上に、その調和がじつにうつくしい。広場のまん中には、噴水塔があり、水晶のようなしずくが下におちて、大きな水盤《すいばん》にたまる。空は青くかがやいている。
「はてな。ここは海の底でしょう。それだのに、なぜあんなに空が青くかがやいているのですか」
「もっともな疑問です。あれはね、東助君。ほんとうの空ではなく、青と同じ色のガラスが天井にはりつめてあるのです。そしてその上に太陽と同じ光をだす電灯がついているのです。しかし海底国にいながら、よく晴れた空が見えるようで、この国の人々はこの広場に集り、いい気持になるのです」
「なるほど。でもほんとうの太陽でないと、からだに必要な紫外線《しがいせん》なんかが含まれていないから、よくありませんね」
「そんなことは、ちゃんと衛生官がしらべてあります。そしてあの光の中には高原に近いほどの紫外線がふくまれているのです。ですから陸上の都会に住んでいる人たちよりは、ずっと強い紫外線にあたっているわけで、そのしょうこには、海底国では病人がひじょうに少いのです。陸上の三分の一ぐらいです」
博士の話を聞けば聞くほど、海底国はいいところである。
「先生、この海底国の人たちは、どんな仕事をして、生活をささえていますの」
「いろいろな仕事があります。物を売る店の商売なんか大したものではありません。主な仕事は、海底を掘って、貴重な鉱物をとること、いろんな深さの海でお魚をとること、海水の中から金をとったり、貴《とうと》い薬品をつくったりすること、地熱を利用して、発電したり、物を温《あたた》めたりすること、建築用の水成岩《すいせいがん》を掘りだして切って石材《せきざい》にすること……かぞえていくと、きりがありません」
「まあ、ずいぶんたくさん仕事があるのですね。陸上よりは忙《せわ》しいぐらいね」
「そうです。なかなか利益をあげています。さあそれでは海底|採鉱場《さいこうじょう》を先に見て、それから海底|漁場《ぎょじょう》の方へ案内してあげましょう」
博士は二人の手をひい
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