があつたとか、兄達に話し聞かせて笑ひました。復た馬車は暗黒《やみ》の中を衝いて進みましたが、それが夜道へ響けて可恐《おそろ》しい音をさせました。
夜が明けてから、私達は田舍町の中を乘つて通りました。高い竹梯子の上で宙乘をする消防夫の姿が馬車の上から見えました。そこは上州の松井田でした。
烏川を越した時の記憶は未だによく殘つて居ます。私達は馬車を降りまして、皆な歩いて渡りました。あの邊の廣濶《ひろ/″\》とした白い光つた空は、まだ私の眼にあります。客だけ下して置いて、河原から水の中へ引き入れた馬車の音を、まだ私は聞くことが出來るやうな氣がして居ます。
斯の旅はすつかりで矢張七日ほどかゝりました。私は馬車に乘つたまゝ半分夢のやうに東京へ入りました。その馬車が着いたところは萬世橋でしたが、あの頃の廣小路のさまは殆んど尋ねることも出來ないほど變つて了ひました。今でも寄席や旅人宿は殘つて居ます。あの並びに馬車の着くところが有りまして、その前の並木の陰で私達は車から下りたかと思ひます。
六
落着く先は姉の家でした。長兄に引連れられて山の中から出て來た私達兄弟の少年は、は
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