り》もない。お師匠さまには、できるだけ長くその部屋にいてもらいたいと言うものばかり。木小屋の戸締まりは一層厳重になり、見張りのものは交代で別室に詰め、夜番は火の用心の拍子木《ひょうしぎ》を鳴らして、伏見屋寄りの木戸の方から裏の稲荷《いなり》の辺までも回って歩いた。
ある日の午後、馬籠峠の上へはまれにしか来ないような猛烈な雹《ひょう》が来た。にわかにかき曇った晩秋の空からは重い灰色の雲がたれさがって、雷雨の時などに降る霰《あられ》よりも大粒なやつを木小屋の板屋根の上へも落とした。やがて氷雨《ひさめ》の通り過ぎて空も明るくなったころ、笹屋庄助《ささやしょうすけ》と小笹屋勝之助の両名が連れだってそこいらの見回りに出たが、二人の足は何かにつけて気にかかる半蔵の座敷牢の方へ向いた。途中で二人の行きあう百姓仲間のものに驚き顔でないものはない。あるものは牛蒡《ごぼう》を掘りに行ってこの雹にあったといい、あるものは桑畠《くわばたけ》を掘る最中であったといい、あるものは引きかけた大根の始末をするいとまもなく馬だけ連れて逃げ帰ったという。すこしの天変地異でもすぐそれを何かの暗示に結びつけて言いたがるのは
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