ぐいだ。この人から見ると、故寛斎老人が生前によく半蔵のことを言って、半蔵の一本気と正直さと来たら、一度これが自分らの行く道だと見さだめをつけたら、それを改めることも変えることもできないのがあの半蔵だと評した言葉も想《おも》い当たる。景蔵、半蔵、この二人は維新後互いに取る途《みち》も異なっていた、あれほど祖先を大切にする半蔵がその祖先の形見とも言うべき万福寺本堂に火を放とうとしたというは、その実、何を焼こうとしたのか、平田同門の旧《ふる》い友人にすらこの謎《なぞ》ばかりは解けなかった。


 しかし、座敷牢へ落ちて行くまでの半蔵が心持ちをたどって見ようとするものも、この旧い友人のほかにない。景蔵は勝重のような後進の者を前に置いて、何もおおい隠そうとする人ではなかった。彼に言わせると、古代復帰の夢想を抱いて明治維新の成就《じょうじゅ》を期した国学者仲間の動き――平田|鉄胤《かねたね》翁をはじめ、篤胤《あつたね》没後の門人と言わるる多くの同門の人たちがなしたこと考えたことも、結局大きな失敗に終わったのであった。半蔵のような純情の人が狂いもするはずではなかろうかと。
 平素まことに言葉もすくな
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