忙にかまけて、たまにしかあの静《しず》の屋《や》を訪《たず》ねることもしなかった。でも、半蔵の顔を見るたびに、旧師も年を取れば取るほどよいところへ出て行ったように想《おも》い見ていた。こんな乱心が青山半蔵の最期とは彼には考えられもしなかった。
 勝重は言った。
「浅見さん、あなたの前ですが、あなたがたがあの平田先生のあとを追いかけたようには、あたしどもはお師匠さまのあとを追いかけることもしませんでしたね。その熱心がわたしどもには欠けていたんです。もっとわたしどもがお師匠さまと一緒に歩いたら、こんな過《あやま》ちはさせずに済んだかもしれません。」
 そういう彼はさも残念なというこころもちを顔に表わしていたが、しかも衷心の狼狽《ろうばい》は隠そうとして隠せなかった。岩崎長世、あるいは宮川寛斎なぞの先輩について、はじめて国学というものに目をあけた半蔵が旧《ふる》い学友のうち、中津川の香蔵もすでに故人となって、今は半蔵より十年ほども早く生まれた景蔵だけが残った。この平田門人は代々中津川の本陣で、もっぱら人馬郵伝の事を管掌し、東山道中十七駅の元締《もとじめ》に任じて来た人で、維新間ぎわまでは同郷
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