した過渡期の空気に包まれていたことも、半蔵の想像以上であった。彼も二、三日野口の家から離れてひとりであちこちの旧知を尋ねたり、森夫の奉公する日本橋本町の紙問屋へ礼に寄ったりしたから、その都度《つど》、大きな都会の深さにはいって見る時をも持った。漆絵《うるしえ》の画《えが》いてある一人乗りないし二人乗りの人力車がどれほど町にふえて来たと言って見ることもできないくらいで、四、五人ずつ隊を組んだ千金丹売《せんきんたんう》りの白い洋傘《こうもり》が動いて行くのも彼の目についた。新旧の移動が各自の生活にまで浸って来たこともはなはだしい。彼は故人となった師鉄胤の弔《くや》みを言い入れに平田家を訪ねようとして、柳原の長い土手を通ったこともある。そこには糊口《ここう》の途《みち》を失った琴の師匠が恥も外聞も思っていられないように、大道に出て琴をひくものすらあった。同門の医師金丸恭順のもとに一夜を語り明かして、その翌日今一度|旧《ふる》いなじみの多吉夫婦を見に左衛門町の家の格子戸《こうしど》をくぐったこともある。そこには樋口十郎左衛門《ひぐちじゅうろうざえもん》のような真庭流《まにわりゅう》の剣客ですら
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