あろうのに、どうしてその方はそんな行為《おこない》に出たかと言われても、わたしには自分の思うことの十が一も答えられませんでした。」
 半蔵の嘆息だ。それを聞くと多吉は半蔵が無事な帰宅を何よりのよろこびにして、自分らはそんな野暮《やぼ》は言わないという顔つきでいる。
 多吉は言った。
「青山さん、あなただって今度の事件は、御国のためと思ってしたことなんでしょう。まあ、その盃《さかずき》をお乾《ほ》しなさるさ。」
 今一度裁判所へ呼び出される日を待てということで、ともかくも半蔵は帰宅を許されて来た人である。彼にはすでに旧|庄屋《しょうや》としても、また、旧本陣問屋としても、あの郷里の街道に働いた人たちと共に長い武家の奉公を忍耐して来た過去の背景があった。実際、あるものをめがけて、まっしぐらに駆けり出そうとするような熱い思いはありながら、家を捨て妻子を顧みるいとまもなしにかつて東奔西走した同門の友人らがすることをもじっとながめたまま、交通要路の激しい務めに一切を我慢して来た彼である。その彼の耐《こら》えに耐えた激情が一時に堰《せき》を切って、日ごろ慕い奉る帝《みかど》が行幸の御道筋にあふれて
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