のは半蔵である。彼はすでに隣家の伊之助を通して、町内の旦那衆や旧御伝馬役の意向を聞いていた。
「もちろん。」
 半蔵の態度がそれを語った。あとは自分でも人足の姿に身を変え、下男の佐吉に言い付けて裏の木小屋から「せいた」(木曾風な背負子《しょいこ》)を持って来させた。細引《ほそびき》まで用意した。彼は町内の旦那衆なぞから出る苦情を取り合わなかった。自分でもその日の人足の中にまじり、継立て方を助けるようにして、それを一切の答えに代えようとしていた。
「旦那、お前さまも出《で》させるつもりか。」
 と佐吉はそこへ飛んで来て言った。
「おれが行かず。お前さまの代わりにおれが行かず。一軒のうちでだれか一人出ればそれでよからずに。」
 とまた佐吉が言った。
 しかし、半蔵はもう背中に半蓑《はんみの》をつけて、敷居の外へ一歩《ひとあし》踏み出していた。尾州藩の一隊は幾組かに分かれて、本陣に昼食の時を送っている家中衆もある。幾本かの鎗《やり》は玄関の式台のところに持ち込んである。あの客の接待には清助というものがあって、半蔵もその方には事を欠かなかった。
「お民、頼んだぜ。」
 その言葉を妻に残して置いて、彼は客よりも先に自分の家の表門を出た。
 半月交代の問屋場は向こう上隣りの九郎兵衛方で開かれるころであった。問屋の前あたりには、思い思いに馬を引いて来る宿内の馬方もある。順番に当たった人足たちが上町からも下町からも集まって来ている。
「本陣の旦那、よい馬は今みんな出払ってしまった。いくら狩り集めようとしても、女馬か、あんこ馬しかない。」
 そんなことを言って、人馬の間を分けながらあちこちと走り回る馬指《うまざし》もある。
「きょうはおれもみんなの仲間入りだぞ。おれにも一つ荷物を分けてくれ。」
 この半蔵の言葉は人足指《にんそくざし》ばかりでなく、そこに働いている問屋の主人九郎兵衛をも驚かした。人足一人につき荷物七貫目である。半蔵はそれを「せいた」に堅く結びつけ、半蓑の上から背中に担《にな》って、日ごろ自分の家に出入りする百姓の兼吉らと共に、チラチラ雪の来る中を出かけた。
「ホウ、本陣の旦那だ。」
 とわけもなしにおもしろがる人足仲間もある。半蔵の方を盗むように見て、笠《かさ》をかぶった首を縮め、くすくす笑いながら荷物を背負《しょ》って行く百姓もある。
「これからお前さま、妻籠《つま
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