すき》がけ手ぬぐいかぶりで、下女たちを相手に、見た目もすずしそうな新茄子《しんなす》を漬《つ》けるおまんがいる。そのそばには二番目の宗太を抱いてやるお民がいる。おまんが漬け物|桶《おけ》の板の上で、茄子の蔕《へた》を切って与えると、孫のお粂は早速《さっそく》それを両足の親指のところにはさんで、茄子の蔕《へた》を馬にして歩き戯れる。裏の木小屋の方からは、梅の実の色づいたのをもいで来て、それをお粂や宗太に分けてくれる佐吉もいる。


「お父《とっ》さん、あなたの退役願いはまだおきき届けにならないそうですね。」
「そうさ。退役きき届けがたしさ。」
 寿平次は吉左衛門のことを「お父《とっ》さん」と呼んでいる。その日の夕飯後のことで、一緒に食事した半蔵はちょっと会所の方へ行って来ると言って、父のそばにいなかった時だ。
「寿平次さん、」と吉左衛門は笑いながら言った。「吾家《うち》へはその事でわざわざ公役が見えましてね、金兵衛さんと私を前に置いて、いろいろお話がありました。二人《ふたり》とも、せめてもう二、三年は勤めて、役を精出《せいだ》せ、そう言われて、願書をお下げになりました。金兵衛さんなぞは、
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