ん、見るもの聞くものが、実に露骨になって来ましたね。こないだも、水戸《みと》の浪人《ろうにん》だなんていう人が吾家《うち》へやって来て、さんざん文句を並べたあげくに、何か書くから紙と筆を貸せと言い出しました。扇子《せんす》を二本書かせたところが、酒を五合に、銭を百文、おまけに草鞋《わらじ》一足ねだられましたよ。早速《さっそく》追い出しました。あの浪人はぐでぐでに酔って、その足で扇屋へもぐずり込んで、とうとう得右衛門《とくえもん》さんの家に寝込んでしまったそうですよ。見たまえ、この街道筋にもえらい事がありますぜ。長崎の御目付《おめつけ》がお下りで通行の日でさ。永井《ながい》様とかいう人の家来が、人足がおそいと言うんで、わたしの村の問屋と口論になって、都合五人で問屋を打ちすえました。あの時は木刀が折れて、問屋の頭には四か所も疵《きず》ができました。やり方がすべて露骨じゃありませんか。君と二人《ふたり》で相州の三浦へ出かけた時分さ――あのころには、まだこんなじゃありませんでしたよ。」


「お師匠さま。」
 夕闇《ゆうやみ》の中に呼ぶ少年の声と共に、村の方からやって来る提灯《ちょうちん》が半
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