平田|鉄胤《かねたね》大人
御許《おんもと》
[#ここで字下げ終わり]
「これはなかなかやかましいものだ。」
「まだそのほかに、名簿を出すことになっています。行年《こうねん》何歳、父はだれ、職業は何、だれの紹介ということまで書いてあるんです。」
その時、半蔵は翌朝の天気を気づかい顔に戸の方へ立って行った。隅田川《すみだがわ》に近い水辺の夜の空がその戸に見えた。
「半蔵さん。」と寿平次はまたそばへ来てすわり直した相手の顔をながめながら、「君の誓詞には古学ということがしきりに出て来ますね。いったい、国学をやる人はそんなに古代の方に目標を置いてかかるんですか。」
「そりゃ、そうさ。君。」
「過去はそんなに意味がありますかね。」
「君のいう過去は死んだ過去でしょう。ところが、篤胤《あつたね》先生なぞの考えた過去は生きてる過去です。あすは、あすはッて、みんなあすを待ってるけれど、そんなあすはいつまで待っても来やしません。きょうは、君、またたく間《ま》に通り過ぎて行く。過去こそ真《まこと》じゃありませんか。」
「君のいうことはわかります。」
「しかし、国学者だって、そう
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