て、思ひがけない出来事の為に飛んだ迷惑を人々に懸けた、とかへす/″\気の毒がる。流石《さすが》に堪へがたい女の情もあらはれて、淡泊《さつぱり》した未亡人の言葉は反つて深い同情を引いたのである。
 弁護士は銀之助を部屋の片隅へ招いた。相談といふは丑松の身に関したことであつた。弁護士の言ふには、丑松も今となつては斯の飯山に居にくい事情も有らうし、未亡人はまた未亡人で是から帰るには男の手を借りたくも有らうし、するからして、あの蓮太郎の遺骨を護つて、一緒に東京へ行つて貰ひたいが奈何だらう――選挙を眼前《めのまへ》にひかへさへしなければ、無論自身で随いて行くべきでは有るが、それは未亡人が強ひて辞退する。せめて斯の際選挙の方に尽力して夫の霊魂《たましひ》を慰めて呉れといふ。聞いて見れば未亡人の志も、尤《もつとも》。いつそ是《これ》は丑松を煩したい――一切の費用は自分の方で持つ――是非。とのことであつた。
『といふ訳で、瀬川さんにも御話したのですが、』と弁護士は銀之助の顔を眺め乍ら言つた。『学校の方の都合は、君、奈何《どん》なものでせう。』
『学校の方ですか。』と銀之助は受けて、『実は――瀬川君を休職にすると言つて、その下相談が有つたといふ位ですから、無論差支は有ますまいよ。校長の話では、郡視学も其積りで居るさうです。まあ、学校の方のことは僕が引受けて、奈何《どんな》にでも都合の好いやうに致しませう。一日も早く飯山を発ちました方が瀬川君の為には得策だらうと思ふんです。』
 斯《か》ういふ相談をして居るところへ、棺《ひつぎ》が持運ばれた。復《ま》た読経の声が起つた。人々は最後の別離《わかれ》を告げる為に其棺の周囲《まはり》へ集つた。軈て焼場の方へ送られることに成つた頃は、もう四辺《そこいら》も薄暗かつたのである。いよ/\舁《かつ》がれて、『いたや』(北国にある木の名)造りの橇へ載せられる光景《ありさま》を見た時は、未亡人はもう其処へ倒れるばかりに泣いた。

       (五)

 火を入れるところまで見届けて、焼場から帰つた後、丑松は弁護士や銀之助と火鉢を取囲《とりま》いて、扇屋の奥座敷で話した。無情《つれな》い運命も、今は丑松の方へ向いて、微《すこ》し笑つて見せるやうに成つた。あの飯山病院から追はれ、鷹匠《たかしやう》町の宿からも追はれた大日向が――実は、放逐の恥辱《はづかしめ
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