は急に燃え輝いたのである。『私の力に出来ますことなら、奈何《どん》なことでも致しますけれど。』
『無論出来ることなんです。』
『私に?』
暫時《しばらく》二人は無言であつた。
『いつそ有の儘を御話しませう。』と銀之助は熱心に言出した。『丁度学校で宿直の晩のことでした。僕が瀬川君の意中を叩いて見たのです。其時僕の言ふには、「君のやうに左様《さう》独りで苦んで居ないで、少許《すこし》打明けて話したら奈何《どう》だ。あるひは僕見たやうな殺風景なものに話したつて解らない、と君は思ふかも知れない。しかし、僕だつて、其様《そん》な冷《つめた》い人間ぢや無いよ。まあ、僕に言はせると、あまり君は物を煩《むづか》しく考へ過ぎて居るやうに思はれる。友達といふものも有つて見れば、及ばず乍ら力に成るといふことも有らうぢやないか。」斯《か》う言ひました。すると、瀬川君は始めて貴方のことを言出して――「むゝ、君の察して呉れるやうなことがあつた。確かに有つた。しかし其人は最早《もう》死んで了つたものと思つて呉れたまへ。」斯う言ふぢや有ませんか。噫――瀬川君は自分の素性を考へて、到底及ばない希望《のぞみ》と絶念《あきら》めて了《しま》つたのでせう。今はもう人を可懐《なつか》しいとも思はん――是程悲しい情愛が有ませうか。それで瀬川君は貴方のところへ来て、今迄|蔵《つゝ》んで居た素性を自白したのです。そこです――もし貴方に彼《あ》の男の真情《こゝろもち》が解りましたら、一つ助けてやらうといふ思想《かんがへ》を持つて下さることは出来ますまいか。』
『まあ、何と申上げて可《いゝ》か解りませんけれど――』とお志保は耳の根元までも紅《あか》くなつて、『私はもう其積りで居りますんですよ。』
『一生?』と銀之助はお志保の顔を熟視《まも》り乍ら尋ねた。
『はあ。』
このお志保の答は銀之助の心を驚したのである。愛も、涙も、決心も、すべて斯《こ》の一息のうちに含まれて居た。
(四)
兎《と》も角《かく》も是事《このこと》を話して友達の心を救はう。市村弁護士の宿へ行つて見た様子で、復《ま》た後の使にやつて来よう。斯う約束して、軈《やが》て銀之助は炉辺を離れようとした。
『あの、御願ひで御座ますが――』とお志保は呼留めて、『もし「懴悔録」といふ御本が御座ましたら、貸して頂く訳にはまゐりますまいか。ま
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