い。しかし保証するとまで言ふ人が有るから確実《たしか》だ。』
『誰ですか、其保証人といふのは――』
『まあ、其は言はずに置かう。名前を出して呉れては困ると先方《さき》の人も言ふんだから。』
 斯う言つて、町会議員は今更のやうに他《ひと》の秘密を泄《もら》したといふ顔付。『君だから、話す――秘密にして置いて呉れなければ困る。』と呉々も念を押した。高柳はまた口唇を引歪めて、意味ありげな冷笑《あざわらひ》を浮べるのであつた。
 急いで別れて行く高柳を見送つて、反対《あべこべ》な方角へ一町ばかりも歩いて行つた頃、斯《こ》の噂好《うはさず》きな町会議員は一人の青年に遭遇《であ》つた。秘密に、と思へば思ふ程、猶々《なほ/\》其を私語《さゝや》かずには居られなかつたのである。
『彼の瀬川といふ教員は、君、是《これ》だつて言ひますぜ。』
 と指を四本出して見せる。尤も其意味が対手には通じなかつた。
『是だつて言つたら、君も解りさうなものぢや無いか。』と町会議員は手を振り乍ら笑つた。
『どうも解りませんね。』と青年は訝《いぶか》しさうな顔付。
『了解《さとり》の悪い人だ――それ、調里のことを四足《しそく》と言ふぢやないか。はゝゝゝゝ。しかし是は秘密だ。誰にも君、斯様なことは話さずに置いて呉れ給へ。』
 念を押して置いて、町会議員は別れて行つた。
 丁度、そこへ通りかゝつたのは、学校へ出勤しようとする準教員であつた。それと見た青年は駈寄つて、大雪の挨拶。何時の間にか二人は丑松の噂を始めたのである。
『是《これ》はまあ極《ご》く/\秘密なんだが――君だから話すが――』と青年は声を低くして、『君の学校に居る瀬川先生は調里ださうだねえ。』
『其さ――僕もある処で其話を聞いたがね、未だ半信半疑で居る。』と準教員は対手の顔を眺め乍ら言つた。『して見ると、いよ/\事実かなあ。』
『僕は今、ある人に逢つた。其人が指を四本出して見せて、彼の教員は是だと言ふぢやないか。はてな、とは思つたが、其意味が能く解らない。聞いて見ると、四足といふ意味なんださうだ。』
『四足? 穢多のことを四足と言ふかねえ。』
『言はあね。四足と言つて解らなければ、「よつあし」と言つたら解るだらう。』
『むゝ――「よつあし」か。』
『しかし、驚いたねえ。狡猾《かうくわつ》な人間もあればあるものだ。能《よ》く今日《いま》まで隠蔽《か
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