そうに言って、お雪は二階の戸棚《とだな》にある写真箱の中から、正太の兜町《かぶとちょう》時代に撮《と》った半身で横向のを探し出して来た。それを亡くなった三人の娘の位牌《いはい》の前に置いて、燈明も進《あ》げた。
「なんだか急にそこいらが寂しく成った」
 と三吉も、今更のように家の内を眺め廻した。正太や豊世がかわるがわるやって来て、長火鉢の側でよく話したことは、何となく急に過去《うしろ》に成った。三吉夫婦の周囲《まわり》には、お俊夫婦、お愛夫婦などの若い一対が幾組も出来たばかりでなく、お福まで、勉と一緒に子供を連れて出て来て、東京に世帯を持つように成った。
 その晩は暑苦しい上に、風も無かった。七度目の懐妊した身《からだ》でいるお雪に取っては、この遽《にわ》かにやって来た暑気が殊《こと》に堪え難かった。蒸されるような身体の熱で、三吉も眠ろうとして眠られなかった。夫婦は子供等のごろごろ寝ている側で、話しつづけた。正太のことを語り合った。勉やお福の噂もした。終《しまい》には、自分等の過去ったことの話までも、それからそれと引出された。
 お雪は横に成りながら、
「……私は、自分のことを考えます
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