とは無い。今までは儲けようと思わなかったから、儲からなかった。これからは大いに儲けようと思うんだ――ナニ、いかないことは無い」
「どうも私は、今までと同じように成りやしないかと思って、それで心配してるんです……何だか、こう、吾儕《われわれ》には死んだ阿爺《おやじ》が附纏《つきまと》っているような気がする……何処へ行って、何を為《し》ても、必《きっ》と阿爺が出て来るような気がする……森彦さん、貴方はそんなこと思いませんかネ」
 兄は黙って弟の顔を見た。
「私はよくそう思いますが」と三吉は沈んだ眼付をして、「橋本の姉さんがああしているのと、貴方がこの旅舎《やどや》に居るのと、私が又、あの二階で考え込んでいるのと――それが、座敷牢の内に悶《もが》いていた小泉忠寛と、どう違いますかサ……吾儕は何処へ行っても、皆な旧《ふる》い家を背負って歩いてるんじゃ有りませんか」
「そうさナ……」
「そいつを私は破壊《ぶちこわ》したいと思うんです。折があったら、貴方にも言出してみようみようと思っていたんです……」
「待ってくれ――俺も直《じ》き五十だよ。五十に成ってサ、未だそれでも俺の思うように成らなかったら
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