から助けられている。碁で言えば、まあ捨石だ。俺が身内を助けるのは、捨石を打ってるんだ」
「どうでしょう、その碁の局面を全然《すっかり》変えて了ったら――」
「どうすれば可いと言うんだ、一体……」
「ですから、こう新生活を始めてみたらと思うんです――田舎《いなか》へでも御帰りに成ったらどうでしょう――私はその方が好さそうに思います。どこまでも貴方は、地方の人で可いじゃ有りませんか、小泉森彦で……それには、田舎へでも退いて、身《からだ》の閑《ひま》な時には耕す、果樹でも何でも植える、用のある時だけ東京へ出て来る、それだけでも貴方には好かろうと思うんです」
「何かい、お前は俺にこの旅舎を引揚げろと言うのかい」と言って、森彦は穴の開くほど弟の顔を眺めて、「そんなことが出来るものかよ。今ここで俺が田舎へでも帰って御覧……」
「面白いじゃ有りませんか」
「馬鹿言え。そんなことを俺が為《し》ようものなら、今日まで俺の力に成ってくれた人は、必《きっ》と驚いて死んで了う……」
 その時、三吉は久し振だから鰻飯《うなぎめし》を奢《おご》ると言出して、それを女中に命ずるようにと、兄に頼んだ。
「稀《たま》に
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