た。その喜悦《よろこび》を持って、復たお雪の方へ行った。
三吉と正太とは久し振で話した。この二人が木曾以来一度一緒に成ったのは、達雄の家出をしたという後であった。顔を合せる度に、二人は種々《さまざま》な感に打たれた。でも、正太は元気で、父の失敗を双肩に荷《にな》おうとする程の意気込を見せていた。
「正太さん。姉さんも余程|沈着《おちつ》いて来ましたろう。僕の家へ来たばかりの時分はどうも未だ調子が本当で無かった――僕が姉さんに、郷里《くに》へ帰ったら草鞋《わらじ》でも穿《は》いて、薬を売りに御出掛なさいなんて、そんな串談《じょうだん》を言ってるところです」
「そういう気分に成れると可《い》いんですけれど……然《しか》し、最早連れて帰っても大丈夫でしょう。母親さんが家へ行って見たら、定めし驚くことでしょうナア。なにしろ、私も手の着けようが有りませんから、一切を挙げ皆さんに宜敷《よろしく》頼む、持って行きたい物は持っておいでなさい――何もかもそこへ投出して了ったんです」
「その決心は容易でなかったろうネ」
「ところが、叔父さん、その為に漸く家の整理がつきました。そりゃあもう、襖《ふすま》に
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