おとうと》は遲《おそ》く眼《め》がさめました。そのかはり私《わたし》より先《さき》に起《お》きました。私達《わたしたち》は今《いま》そのことで言《い》ひ合《あ》つて居《ゐ》るところです。』
『私《わたし》は遲《おそ》く眼《め》がさめても、兄《にい》さんのやうに長《なが》く寢《ね》て居《ゐ》ないで、むつくり起《お》きた方《はう》がいゝと思《おも》ひます。』
と弟《おとうと》が言《い》ひました。すると、兄《あに》が言《い》ふには、
『弟《おとうと》があんなことを言《い》つて威張《ゐば》つて居《ゐ》ます。そのくせ、私《わたし》が早《はや》く眼《め》のさめた時分《じぶん》には、弟《おとうと》はまだなんにも知《し》らないでグウ/″\グウ/″\と眠《ねむ》つて居《ゐ》ました。私《わたし》は鷄《にはとり》の鳴《な》いたのを知《し》つて居《ゐ》ます。夜《よ》の明《あ》けたのも知《し》つて居《ゐ》ます。』
『そんなことを言《い》つて兄《にい》さんが威張《ゐば》つても、何時《いつ》までも兄《にい》さんのやうに寢《ね》て居《ゐ》たら、眼《め》がさめないのも同《おな》じことです。』
とまた弟《おとうと》が言《い》ひました。
祖父《おぢい》さんはこの兄弟《きやうだい》の爭《あらそ》ひを聞《き》いて笑《わら》ひ出《だ》しました。さうして斯《か》う言ひました。
『馬鹿《ばか》な兄弟《きやうだい》だ。お前達《まへたち》がそんなことを言《い》つて爭《あらそ》つて居《ゐ》るうちに、太陽《おてんとう》さまはもう出《で》てしまつたぢやないか。』
[#地から8字上げ](終)
底本:「名著複刻 日本児童文学館 11」ほるぷ出版
1973(昭和48)年3月初版発行
底本の親本:「ふるさと」實業之日本社
1920(大正9)年12月5日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※疑問点の確認にあたっては、「島崎藤村全集 第十六卷」新潮社、1951(昭和26)年3月15日発行を参照しました。
入力:Nana ohbe
校正:林 幸雄
2004年1月21日作成
2004年2月19日修正
青空文庫作成ファイル:
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