《の》にも畠《はたけ》にもある事《こと》を知《し》りました。竹籔《たけやぶ》から取《と》つて來《き》た青《あを》い竹《たけ》の子《こ》、麥畠《むぎばたけ》から取《と》つて來《き》た黄色《きいろ》い麥藁《むぎわら》で、翫具《おもちや》を手造《てづくり》にする事《こと》の言《い》ふに言《い》はれぬ樂《たの》しい心持《こゝろもち》を覺《おぼ》えました。
畠《はたけ》の隅《すみ》に堤燈《ちやうちん》をぶらさげたやうな酸醤《ほゝづき》が、父《とう》さんに酸醤《ほゝづき》の實《み》を呉《く》れまして、その心《しん》を出《だ》してしまつてから、古《ふる》い筆《ふで》の軸《ぢく》で吹《ふ》いて御覽《ごらん》と教《をし》へて呉《く》れました。筆《ふで》の軸《ぢく》は先《さき》の方《はう》だけを小刀《こがたな》か何《なに》かで幾《いく》つにも割《わ》りまして、朝顏《あさがほ》のかたちに折《を》り曲《ま》げるといゝのです。その受口《うけくち》へ玉《たま》のやうにふくらめた酸醤《ほゝづき》をのせ、下《した》から吹《ふ》きましたら、輕《かる》い酸醤《ほゝづき》がくる/\と舞《ま》ひあがりました。そして朝顏《あさがほ》なりの管《くだ》の上《うへ》へ面白《おもしろ》いやうに落《お》ちて來《き》ました。
三三 旅《たび》の飴屋《あめや》さん
父《とう》さんの村《むら》へも、たまには飴屋《あめや》さんが通《とほ》りました。旅《たび》の飴屋《あめや》さんは、天平棒《てんびんぼう》でかついて來《き》た荷《に》を村《むら》の石垣《いしがき》の側《わき》におろして、面白《おもしろ》をかしく笛《ふえ》を吹《ふ》きました。
なんと、飴屋《あめや》さんの上手《じやうず》に笛《ふえ》を吹《ふ》くこと。飴屋《あめや》さんは棒《ぼう》の先《さき》に卷《ま》きつけた飴《あめ》を父《とう》さんにも賣《う》つて呉《く》れまして、それから斯《か》う言《い》ひました。
『さあ、おいしい飴《あめ》ですよ。これを食《た》べて、おとなしくして居《ゐ》て下《くだ》さると、復《ま》た私《わたし》が飴《あめ》をかついで來《き》てあげますよ。』
日《ひ》に燒《や》けて旅《たび》をして歩《ある》く斯《こ》の飴屋《あめや》さんは、何處《どこ》か遠《とほ》いところからかついで來《き》た荷《に》を復《ま》た肩《かた》に掛《か》けて、笛《ふえ
前へ
次へ
全86ページ中46ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング