物《えもの》を手《て》に入《い》れるのだと聞《き》きました。そして巣《す》を持《も》つて逃《に》げ歸《かへ》るのだと聞《き》きました。どうかすると蘇生《いきかへ》つた蜂《はち》に追《お》はれて刺《さ》されたといふ人《ひと》の話《はなし》も聞《き》きました。さうなると鐵砲《てつぱう》をかついで獸《けもの》を打《う》ちに行《ゆ》くも同《おな》じやうなものです。

   四五 青《あを》い柿《かき》

『もうお前《まへ》さんはそんなに赤《あか》くなつたのですか。』
とまだ青《あを》くて居《ゐ》る柿《かき》が、お隣《とな》りの柿《かき》に言《い》ひました。この青《あを》い柿《かき》と、赤《あか》い柿《かき》とは、お百姓《ひやくしやう》の家《うち》の庭《には》にある二|本《ほん》の柿《かき》の木《き》の枝《えだ》に生《な》つて居《ゐ》ました。
赤《あか》い柿《かき》は青《あを》い柿《かき》を慰《なぐさ》めようと思《おも》ひまして、
『さう、力《ちから》を落《おと》すものでは有《あ》りません。お前《まへ》さんだつても今《いま》に、私《わたし》のやうに好《い》い色《いろ》がつきますよ。』
と言《い》ひましたら、青《あを》い柿《かき》は首《くび》を振《ふ》りまして、
『いえ、あのお猿《さる》さんが蟹《かに》にぶつけたのも、きつと私《わたし》のやうな澁《しぶ》い柿《かき》で、自分《じぶん》で取《と》つて食《た》べたといふのはお前《まへ》さんのやうな甘《あま》い柿《かき》ですよ。』
と力《ちから》を落《おと》したやうに言《い》ひました。
お百姓《ひやくしやう》は庭《には》へ見廻《みまは》りに來《き》まして、赤《あか》い柿《かき》を大《おほ》きな笊《ざる》に入《い》れて持《も》つて行《い》つてしまひました。その木《き》の枝《えだ》の高《たか》い上《うへ》の方《はう》には、たつた一つだけ柿《かき》の赤《あか》いのが殘《のこ》つて居《ゐ》ました。殘《のこ》つた赤《あか》い柿《かき》が高《たか》いところからお隣《とな》りの柿《かき》を見《み》ますと、まだ一つも色《いろ》のついたのが有《あ》りませんでしたから、
『どうしてお前《まへ》さんは、そんなに愚圖々々《ぐづ/\》して居《ゐ》るんですか。』
と尋《たづ》ねました。さう言《い》はれると、青《あを》い柿《かき》はまた力《ちから》を落《おと》した
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