ら、あなたの手は皸《ひび》だらけじゃありませんか」
と看護婦に叱られて、おげんはすごすごと自分の部屋の方へ戻って行った。その夕方のことであった。おげんは独りでさみしく部屋の火鉢の前に坐っていた。
「小山さん、お客さま」
と看護婦が声を掛けに来た。思いがけない宗太の娘のお玉がそこへ来てコートの紐を解いた。
「伯母さんはまだお夕飯前ですか」とお玉が訊《き》いた。
「これからお膳が出るところよのい」とおげんは姪《めい》に言って見せた。
「それなら、わたしも伯母さんと御一緒に頂くことにしましょう。わたしの分も看護婦さんに頼みましょう」
「お玉もめずらしいことを言出したぞや」
「実は伯母さん、今日は熊叔父さんのお使に上りましたんですよ。わたしが伯母さんのお迎えに参りましたんですよ」
しばらくおげんは姪の顔を見つめたぎり、物も言えなかった。
「お玉はこのおばあさんを担《かつ》ぐつもりずらに」
とおげんは笑って、あまりに突然な姪の嬉しがらせを信じなかった。
しかし、お玉が迎えに来たことは、どうやら本当らしかった。悩ましいおげんの眼には、何処までが待ちわびた自分を本当に迎えに来てくれたもので
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