病象の一部分を見て、直に膏薬を塗するに留まるなり。咄、藪医術はいかほどに進歩するとも、人世に於て何の功益するところあらんや。信仰個条彼れ自身は、藪医術にあらず、繩墨彼自身は藪医術にあらず、唯心論も亦た然り、唯物論も亦た然り、然れども個の信仰個条を擁し、個の繩墨を擁し、個の善悪論を擁し、個の唯心論を擁し、個の唯物論を擁し、之を以て宇宙を法規する唯一の真理と迷信する輩の手に於て、藪医術の本源は存するなり。
[#地から2字上げ](明治二十六年五月)



底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房
   1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行
   1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行
初出:「文學界 五號」文學界雜誌社
   1893(明治26)年5月31日
入力:kamille
校正:鈴木厚司
2005年3月30日作成
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