切手四十枚 一労働者
鶏卵七個 〃
阿部からの手紙。――応援金を少しでもいいから送ってくれるように運動して貰いたい。そうすれば労働組合や農民組合連合会の人達に対しても面目が立ち、同時に争議団一行の元気を一層引き立てることが出来るから、皆で相談の上至急お願いしたい。
七之助。――阿部さんは、どうして我々百姓の争議に無関係な小樽の労働者達が、(組合員はまずとして)仕事を休んでまでも、そして警察へ引ッ張られて行って、殴られて迄も応援してくれるのか分らない、と涙を光らせながら話した。お互い貧乏な労働者から、毎日のように寄附が集ってくる、それも不思議でならない、と云うのだ。
「矢張り貧乏人だからよ。――地主と資本家とでは変っておれ、お互いに金のある奴から搾られていることでは同じからよ。」
「それアそうださ。んでも……こんなに……」――仲々分らない。
とにかく、俺さえ吃驚する程、労働者が戦ってくれている。めずらしいことだ。――やっぱり労働者と百姓は、底の底では同じ血が通っているんだ。
争議が長びくかも知れないから、と云うので、そっちから馬鈴薯五俵送ってきたのを見て、組合員が泣いたよ。米でなくて薯だって! 食うや食わずで仕事をしている労働組合員でも、薯を飯の代りにはしていない。――百姓ッてものが、どんなに低い生活をしているか、而もそれでいて、どんなに飢えなければならないか!
武藤などは、この「薯」のことだけでも、飽く迄[#「飽く迄」は底本では「飢く迄」]戦い抜かなければならないと云っている。
情報、六
出樽以来二週間に達した。争議団のうちの小作人で、最初日和見のものも随分いたようであったが、日々の交渉、集合による訓練、労農党員の「社会問題講座」の開設等によって、(これは忙しい合間合間に行われたが、その効果では著しいものがあった。)次第に意識的、階級的立場に教育され、ビラ撒き其他の運動に積極的に「動員がきいてきた。」
争議団からは二名、「労農共同委員会」に委員が出ているが、更に「交渉」「訪問」「文書」「会計」の部門にも、これを編入し、組織的に、活動に従事させている。
健は、情報や個人個人から来る詳しい手紙や毎朝の新聞で、争議がどういう風に進んでいるか、大体の見当はついていた。――其処ではどんな恐ろしい事が毎日起っているとしても、(
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