まいと思っている。彼女が若し本当に自分の相手を見出したとすれば、それはキット優れた同志であり、そういう二人の生活はお互の党生活を助成し合う「立派な」ものだろうと思った。――私は今迄こんなに一緒に仕事をして来ながら、伊藤をこういう問題の対象としては一度も考えたことがなかった。だが、それは如何《いか》にも伊藤のしっかりしていたことの証拠で、それが知らずに私たちの気持の上にも反映していたからである。
「責任を持って、良い奴を世話してやることにしよう。」
 私は冗談のような調子だが、本気を含めて云った。が、伊藤はその時苦い顔を私に向けた……。

 帰りは表通りに出て、円タクを拾った。自動車は近路をするらしく、しきりに暗い通りを曲がっていたが、突然\賑《にぎ》やかな明るい通りへ出た。私は少し酔った風をして、帽子を前のめりに覆《かぶ》った。
「何処《どこ》へ出たの?」
と訊くと、「銀座」だという。これは困ったと思った。こういうさかり[#「さかり」に傍点]場は苦手なのだ。が、そうとも云えず、私は分らないように、モット帽子を前のめりにした。だが私は銀座を何カ月見ないだろう。指を折ってみると――四カ月も
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