ことにし、私たちは身体を横にして長くなった。私は伊藤の鏡台を見て、それが笠原の鏡台よりもなかなか立派で、黄色や赤や緑色のお白粉《しろい》まで揃《そろ》っているので、
「オヤ/\!」
と云《い》った。
 伊藤はそれと気付いて、
「嫌《いや》な人!」
と、立ってきた。
「伊藤は赤、青、黄と手をかえ、品をかえて、夜な夜な凄腕《すごうで》をふるうんだ。」
と須山が笑った。
「そら、そこに三越とか松坂屋の包紙が沢山あるだろう。献上品なんだよ。幸福な御身分さ!」
 工場で一寸《ちょっと》眼につく綺麗《きれい》な女工だと、大抵監督のオヤジから、係の責任者から、仲間の男工から買物をしてもらったり、松坂屋に連れて行ってもらったり、一緒に「しるこ屋」に行っておごってもらったりする。伊藤は見込のありそうな平職工だと誘われるまゝに出掛けて行ったし、自分からも勿論《もちろん》誘うようにしていた。それで彼女は工場には綺麗に顔を作って行った。然しそれは男工の場合も同じで、小ざッぱりした身装《みなり》と少しキリリとした顔をしていると、女工たちから須山の所謂《いわゆる》「直接\且《か》つ具体的に」附きまとわれた。
「ど
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