しのつらいことがあるとしても、我々も又戦争で敵の弾《たま》を浴びながら闘っている兵隊さんと同じ気持と覚悟をもってやっていたゞき度《た》いと思うのです。
  一言みなさんの覚悟をうながして置く次第であります。
                                       工場長

「我々の仕事は第二の段階に入った!」
と須山は云った。
 工場では、六百人を最初の約束通りに仕事に一定の区切りが来たら、やめて貰《もら》うことになっていたが、今度方針を変えて、成績の優秀なものと認めたものを二百人ほど本工に繰り入れることになったから、各自一生懸命仕事をして欲しいと云うのだった。そしてその噂《うわ》さを工場中に撒《ま》きちらし始めた。
 私と須山は、うな[#「うな」に傍点]った。明らかにその「噂《うわ》さ」は、首切りの瞬間まで反抗の組織化されることを妨害するためだった。そして他方では「掲示」を利用し、本工に編成するかも知れないと云うエサで一生懸命働かせ、モット搾《しぼ》ろうという魂胆だったのである。
 須山はその本質をバク露するために、掲示を写してきたのだった。これで私たちは会社の
前へ 次へ
全142ページ中75ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング