ンガランとかわってゆくのです。それだのに、お父さんにお金のことなんか云えますか。でも、みんなが、み国のためだというのでこの前、ほんとうに思い切って、お父さんに話してみました。そしたら、お父さんはしばらく考えていましたが、とッてもこわい[#「こわい」に傍点]顔をして、み国のためッてどういう事だか、先生にきいてこいと云うんです。後で、男のお父さんが涙をポロポロこぼして、あしたからコジキ[#「コジキ」に傍点]をしなければ、モウ食って行けなくなった、それに私もつれて行くッて云うんです。
 先生。
 お父さんはねるときに、今戦争に使ってるだけのお金があれば、日本中のお父さんみたいな人たちをゆっくりたべさせることが出来るんだと云いました。――先生はふだんから、貧乏な可哀相な人は助けてやらなければならないし、人とけんか[#「けんか」に傍点]してはいけないと云っていましたね。それだのに、どうして戦争はしてもいいんですか。
 先生、お父さんが可哀そう[#「そう」に傍点]ですから、どうか一日も早く戦争なんかやめるようにして下さい。そしたら、お父さんやみんながらく[#「らく」に傍点]になります。戦争が長くな
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