ればなるほどかゝりも多くなるし、みんながモット/\たべられなくなって、日本もきっとロシヤみたいになる、とお父さんが云っています。
 先生。私は戦争のお金を出さなくてもいゝようにならなければ、みんなにいじめられますから、どうしても学校には行けません。お願いします。一日も早く戦争をやめ[#「やめ」に傍点]させて下さい。こゝの長屋ではモウ一月も仕事がなければ、みんなで役場へ出かけて行くと云っています。そうすれば、きっと日本もロシアみたいになります。
 どうぞ、お願いします。

 この手紙を、私のところへよく話しにくる或る小学教師が持って来た。高等科一年の級長の書いたものだそうである。原文のまゝである。――私はこれを読んで、もう一息[#「もう一息」に傍点]だと思った。然しこの級長はこれから打ち当って行く生活からその本当のことを知るだろうと考えた。
――一九三一・一二・一○――[#この行は行末より1字上がり]



底本:「日本プロレタリア文学集・20 「戦旗」「ナップ」作家集(七)」新日本出版社
   1985(昭和60)年3月25日初版
   1989(平成元)年3月25日第4刷
底本の親本:「小林多喜二全集第3巻」新日本出版社
初出:「東京パック」1932年2月号
入力:林 幸雄
校正:ちはる
2002年1月14日公開
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