彼等は漠然と、これが「恐ろしい」「赤化」というものではないだろうか、と考えた。が、それが「赤化」なら、馬鹿に「当り前」のことであるような気が一方していた。然し何よりグイ、グイと引きつけられて行った。
「分る、本当、分る!」
 ロシア人同志が二、三人ガヤガヤ何かしゃべり出した。支那人はそれ等《ら》をきいていた。それから又|吃《ども》りのように、日本の言葉を一つ、一つ拾いながら、話した。
「働かないで、お金|儲《もう》ける人いる。プロレタリア、いつでも、これ。(首をしめられる恰好)――これ、駄目! プロレタリア、貴方方、一人、二人、三人……百人、千人、五万人、十万人、みんな、みんな、これ(子供のお手々つないで、の真似をしてみせる)強くなる。大丈夫。(腕をたたいて)負けない、誰にも。分る?」
「ん、ん!」
「働かない人、にげる。(一散に逃げる恰好)大丈夫、本当。働く人、プロレタリア、偉張る。(堂々と歩いてみせる)プロレタリア、一番偉い。――プロレタリア居ない。みんな、パン無い。みんな死ぬ。――分る?」
「ん、ん!」
「日本、まだ、まだ駄目。働く人、これ。(腰をかがめて縮こまってみせる)働か
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