竇氏
田中貢太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)覆《おおい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)南《なん》三|復《ふく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》った
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 不意に陽がかげって頭の上へ覆《おおい》をせられたような気がするので、南《なん》三|復《ふく》は騎《の》っている驢《ろば》から落ちないように注意しながら空を見た。空には灰汁《あく》をぶちまけたような雲がひろがって、それを地にして真黒な龍のような、また見ようによっては大蝙蝠《おおこうもり》のような雲がその中に飛び立つように動いていた。そのころの日和癖《ひよりくせ》になっている驟雨《とおりあめ》がまた来そうであった。
 南は新しい長裾《ざんさい》を濡らしては困ると思った。南は鞭の代りに持っている羅宇《らう》の長い煙管《きせる》を驢に加えた。其処は晋陽《しんよう》の郊外であった。晋陽の世家《きゅうか》として知られてい
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