、第3水準1−47−55]畜《ちくしょう》、ここへ来やがって何をしようというのだ」
 和尚は舟の中を見て怒鳴りながら禅杖を振りあげた。と、白娘子と小婢は、そのまま水の中へもんどり打って飛び込んでしまった。許宣はびっくりして眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》った。そうして許宣は夢が覚めたようになった。
「あの和尚さんは、なんという和尚さんでしょう」
 許宣は気が注いて傍の人に訊いた。
「あれが、法海禅師様だ、活仏《いきぼとけ》だ」
 和尚の侍者が許宣を呼びにきた。許宣はそれに伴れられて和尚の前へ往った。
「お前さんは、あの女達とどこであわっしゃった」
 許宣はそこではじめからのことを話した。和尚はそれを聞いて言った。
「宿縁だ、しかし、お前さんの欲念が深いからだ、だが、災難はもうすぎたらしい、これから杭州へ帰って、修身立命の人にならなくてはいけない、もし再びこんなことがあったら、湖南の浄慈寺《じょうじじ》に来てわしを尋ねるがいい、今、わしが偈《げ》を言って置くから、覚えているが宜い、本是れ妖蛇婦人に変ず、西湖岸上婦身を売る、汝欲重きに因って他計に遭う、難有れば湖南老僧
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