も面倒ですから、朝ゆつくり汽車に乗らうと思ひまして、)
(さうですか、私も今日二人の仲間と一緒にやつて来ましたが、昼間は講演なんかで、このあたりを見ることが出来なかつたもんですから、見たいと思つて朝にしたところです、)
(それぢや、また面白い詩がお出来になりますね、)
(駄目です、僕の詩は真似事なんですから、)
(先生の詩は新しくつて、私は先生の詩ばかり読んでをりますわ、)
(それは有難いですね。ぢや、あなたも詩をお作りでせうね、)
(たゞ拝見するだけでございますわ、)
さう云つて女は笑つた。
(詩はお作りにならなくつても、歌はおやりでせう、水郷は好いですね、何か水郷の歌がお出来でせう、)
(それこそほんの真似事を致しますが、とても、私なんかでは駄目でございますわ、)
湖畔の逍遥から連れ立つて帰つて来た二人は彼の室に遅くまで話した。女は伯母の家で作つたと云ふ短歌を書いたノートを出して見せたり短歌の心得と云ふやうなありふれた問ひを発したりした。
(明日、私は、舟を雇ふて、××まで行つて、其所から汽車に乗らうと思ふんですが、あなたはどうです、一緒にしませんか、)
話の中で彼がこんなこ
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