/\と閃いたものがある。
「私、叔母よ、」
それは亡くなつた養父がこのあたりの不思議の家にゐると云つた養母であつた。義直は吃驚して階段をかけおり下駄も履かずに門口へ出やうとした。と、今まで開いてゐたガラス戸が急に両方から締つて来てぴつしやりと合つてしまつた。義直は周章てゝそれを開けやうとしたが開かなかつた。彼は四枚あるガラス戸を彼方此方と動かして見たが、一枚板のやうにびつちりと喰付いてしまつて動きもしなかつた。
義直はその夜から蹤跡が判らなくなつてしまつた。
底本:「伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典」学研M文庫、学習研究社
2003(平成15)年10月22日初版発行
初出:「黒雨集」大阪毎日新聞社
1923(大正12)年10月25日
入力:川山隆
校正:門田裕志
2009年8月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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