虎媛
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)明《みん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+卞」、第3水準1−86−52]《べん》
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明《みん》の末の話である。中州《ちゅうしゅう》に焦鼎《しょうてい》という書生があって、友達といっしょに※[#「さんずい+卞」、第3水準1−86−52]《べん》の上流《かわかみ》へ往ったが、そのうちに清明《せいめい》の季節となった。その日は家々へ墓参をする日であるから、若い男達はその日を待ちかねていて、外へ出る若い女達を見て歩いた。焦生も友達といっしょに外へ出る若い女を見ながら歩いていたが、人家はずれの広場に人だかりがしているので、何事だろうと思って往ってみると、一匹の虎を伴《つ》れた興行師がいて、柵の中で芸をさしていた。
それは斑紋《はんもん》のあざやかなたくましい虎であったが、隻方《かたほう》の眼が小さく眇《すがめ》になっていた。年老《としと》った興行師の一人は、禿《は》げた頭を虎の口
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