ると思った。伝蔵は火のように怒って拳を固めて蟹に飛びかかって往こうとすると、体がしびれて判らなくなってしまった。
 そして、気が注いて眼を開けてみると、己《じぶん》は巫女ヶ奈路の草の上で寝て夜が明けたところであった。そこで伝蔵は静《しずか》に起きて家へ帰って来たが、それ以後は不思議なことにも逢わなかった。



底本:「日本の怪談(二)」河出文庫、河出書房新社
   1986(昭和61)年12月4日初版発行
底本の親本:「日本怪談全集」桃源社
   1970(昭和45)年初版発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:Hiroshi_O
校正:小林繁雄、門田裕志
2003年7月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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