うな衣服《きもの》! そして、白い脛が! 白い脛が!
 見開いた眼には何も見えぬ。口は蟇《がま》の様に開けた儘、ピクリピクリと顔一体が痙攣《ひきつ》けて両側《りやうわき》で不恰好に汗を握つた拳がブルブル顫へて居る。
「神様、神様。」と、何処か心の隅の隅の、ズツと隅の方で…………。[#地から1字上げ](五月二十六日脱稿)
[#地から1字上げ]〔生前未発表・明治四十一年五月稿〕



底本:「石川啄木全集 第三巻 小説」筑摩書房
   1978(昭和53)年10月25日初版第1刷発行
   1993(平成5年)年5月20日初版第7刷発行
※生前未発表、1908(明治41)年5月執筆のこの作品の本文を、底本は、土岐善麿氏所蔵啄木自筆原稿によっています。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、103−下−18と104−上−5の「釧路十勝二ヶ国」をのぞいて、大振りにつくっています。
※「揶揄《からか》つた」と「揄揶《からか》つて」の混在は、底本通りです。
入力:Nana ohbe
校正:川山隆
2008年10月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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