了ふ工夫はないだらうか!』這※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《こんな》考へまでも時として信吾を悩ました。
そして又、静子の吉野に対する素振も、信吾の目に快くはなかつた。総じて年頃の兄が、年頃の妹の男に親まうとするを見るのは、楽いものではない。平生《へいぜい》恋といふものに自由な信条を抱いてる男でも、其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》場合には屹度自分の心の矛盾を発見する。
『戸籍上は兎も角、静子はモウ未亡人ぢやないか!』
信吾の頭脳には恁※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《こんな》皮肉さへも宿つてゐる。これと際立つところはないが、静子が吉野の事といへば何より大事にしてゐる、それが唯癪に障る。理由もなく不愉快に見える――。
『マア、起きてらつしつたんですか!』と、富江は開け放した縁側に立つた。
『貴女《あなた》でしたか!』
『オヤ、別の人を待つてゐたの!』
『ハツハハ。相不変《あひかはらず》不減口《へらずぐち》を吐《はた》く! 暑いところを能くやつて来ましたね。』
『貴方が昼寝してるだらうから、起して上げようと思つて。』
『屹度《きつと》神山さんが来ると思つたから、恁《か》うしてチヤンと起きて待つてたんですよ。』
『其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》事|誰方《どなた》から習つて? ホホヽヽ、マア何といふ呆然《ぼんやり》した顔! お顔を洗つて被来《いらつしや》いな。』と言ひ乍ら、遠慮なく座つた。
『適《かな》はない、適はない。それぢや早速仰せに従つて洗つて来るかな。』
『然うなさいな。モウ日が暮れますから。』と言つて、無造作に其処に落ちてゐる小形の本を取る。
立ち上つた信吾は、
『ア、其奴《そいつ》ア可《い》けない。』と、それを取返さうとする。
娘らしい、態《さま》をして、富江は素早く其手を避けた。
『何ですの、これ? 小説?』
黄《きいろ》い本の表紙には、[#ここから横組み]“True《ツルー》 Love《ラヴ》”[#ここで横組み終わり]と書かれた。文科の学生などの間に流行《はやつ》てゐる密輸入のアメリカ版の怪しい書《ほん》だ。
『ハツハハ。』と信吾は手を引込ま
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